ｂｙ わんべえ
- 美奈子 「ま〜こちゃんっ。チョコ作って〜〜っ！！(^｡^)/」
- 日曜の朝 ７時。あたしは、美奈子ちゃんの出し抜けの訪問に たたき起こされた。
- 「なんだい、美奈子ちゃん、こんな時間に・・。お菓子なら、いつだって作って
- あげてるじゃないか・・・・。」
- 美奈子 「あら？ まこちゃんらしくないこと 言うわねぇ。あしたは２月１４日。バレンタイン
- ・デーじゃないの。」
- え・・？ ああ・・そうか。 もう、あした、だったのか・・・・。
- 美奈子 「でね、あたし、い〜っぱい配るもんだから、おこづかい いくらあっても足り
- ないでしょ。まこちゃんに、気のきいたやつ作ってもらえないかな〜・・って
- 思って・・・・。ちょっと、あがらせてもらうわね。(^^)」
- 「あ・・・・うん・・。」
- 美奈子ちゃんは、ズカズカ上がりこむと、さっそくキッチンに立って、用意してきた
- エプロンなんか つけちゃって・・。やる気まんまんだね。
- 「ま、まあ、ちょっと待ってよ。 まず、お茶でも入れて、ゆっくりしてから、ね。」
- アップル・ティーの 甘酸っぱい香りが 部屋中に広がる。
- うぅーん、やっと目が覚めてきた。
- 「チョコレートか・・原料から作るなんて、あたしだって できないよ。チョコのか
- たまりを買ってきて、湯煎でとかして 成型するか・・。それより、パウダーを
- 使った、チョコレートケーキか、クッキーなんて どう？」
- 美奈子 「あ、チョコクッキー、それいいっ！(^^) なにしろ 数が多いもんだから、どう
- しようかと思ってたのよねー。」
- 「多いって、何人ぐらいさ？」
- 美奈子 「え〜と、ね。・・Ａクンでしょ・・・。Ｂクンでしょ・・・。Ｃクン・・、Ｄクン・・、
- Ｅクン、Ｆクン、Ｇクン、Ｈクン、Ｉクン、Ｊクン、Ｋクン、Ｌクン、Ｍクン、
- Ｎクン、Ｏクン、Ｐクン、Ｑクン、Ｒクン、Ｓクン、Ｔクン、Ｖクン、Ｗクン、
- Ｘクン、Ｙクン、Ｚクン・・・・・・それに、αクンに、βクン。」
- 「ア、アルファー君に、ベーター君？？？(ﾟ_ﾟ;)ﾟ〜」
- 美奈子 「英語のアルファベットだけじゃ、足りないのよ。(^^) あら？２７人しかいない？
- 確か、２８人だったと思ったけどなぁ。」
- 「さっき、“Ｕ”が抜けてたけど・・・・。」
- 美奈子 「あ、そうそう。ＵクンＵクン。(^^) それと、パパとアルテミスにひとつずつの・・・
- 都合、３０個！！(^｡^)/」
- 「３０個・・。気楽に言ってくれるなぁ。(^^;)ﾟ〜 ま、もう少ししたら、お店が開くから、
- いっしょに買い出しに行こうか。」
- 日曜の街は、朝から 大にぎわい。あちこちで バレンタイン商戦のラストスパート。
- 小学生の女の子から ＯＬ風まで、５個も１０個もチョコのまとめ買いだ。 さすがに
- ３０個っていうのは・・・(^^;)ﾟ〜 あ、あれ？いるよ〜。(ﾟ_ﾟ;)ﾟ〜 あのＯＬ、紙袋２つに
- ぎっしりチョコつめて・・・・何個、買ったんだろ。スゴイなー。
- 美奈子 「とうぜんよ。まあ義理もあるでしょうけど、“バレンタインは女の子の戦争”
- って言葉もあるくらいだもんね。」
- 「戦争・・ねぇ。(^^;)ﾟ~ あれ？あそこにいるの、亜美ちゃんじゃないかな？」
- 亜 美 「あら、まこちゃんに 美奈子ちゃん。(^^) ２人も チョコ買いに来たの？」
- 「うん、まあ そんなものをね。(^^)ﾟ〜 へぇー、亜美ちゃんが バレンタイン
- チョコを買いにきてるとはねぇ。・・・・誰にあげるの？」
- 美奈子 「決ってるじゃない。浦和クンよ、浦和クン。」
- 亜 美 「ち、違うわ。おとうさんに あげるチョコをね、買ったの。・・浦和くんは・・まだ・・。」
- 「うん・・、わかるな。浦和クンを ほんとに好きだって、言えるようになったら・・。
- そのとき、なんだよね。」
- 亜 美 「あの・・、わ、私、このあと また塾があるから・・・・。それじゃ、ふたりとも、
- またね！」
- あはっ、まっ赤になって、駆けてっちゃった。亜美ちゃんて、ほんとに かわいいん
- だから・・・・。(^^)ﾟ〜
- あれ・・？美奈子ちゃん、どこ、行ったの？？？・・あ〜あ、またゲームコーナー
- で つかまってるよ。 まぁ〜ったく、のんきな“戦争”だこと・・・・。
- シナモンティーの、せつない、おとなの香りが 部屋中に広がる。
- 長い買物になっちゃったなー。さんざん遊んで、食事もして、帰ってきたら もう
- ３時だもんね。 お茶を飲んだら、すぐ クッキー作りに とりかからないと・・。
- 美奈子 「ねぇ・・まこちゃん。ずっと、聞きそびれてたけど、まこちゃんは、あした
- 誰かにチョコ、贈らないの？」
- 「・・うん・・・・。」
- 美奈子 「ひとつも・・・・？」
- 「ちょうど今、ほんとに 好きって言えるひとが、いないから、ね。」
- 美奈子 「バレンタインって、まこちゃんのための日って 気がしてたけど。」
- 「ダメなんだ。 あたし、ほんとに好きなひとでなきゃ、チョコなんて贈れない
- ・・・・。亜美ちゃんと同じ。お祭りで、恋なんかできないんだよ・・。」
- 美奈子 「・・・・・・・・」
- 「あっ、ち、違うよ！ 美奈子ちゃんは、それでいいの。いつも、明るくて、み
- んなに好かれる美奈子ちゃんは、そうでなくっちゃ！・・タイプが違うって
- ことなのさ。あたしたち。」
- 美奈子 「・・・・でも、同じところもあるよね・・・・。」
- 「・・・？・・・」
- 美奈子 「うさぎちゃんや、レイちゃんは、これから毎年・・・ずーっと、同じひとに
- チョコをあげるんだよね。」
- 「・・・・うん。」
- 美奈子 「そういうのって、いいな・・。毎年、チョコをあげるひとが違うのって、ちょ
- っと 寂しい・・・。」
- ま・・、まずい・・・・。あたしって、こういうとこ無神経なんだ・・・・。美奈子ちゃんを
- 落込ませて、どうするんだよ。
- また、・・・・アランのこと、思い出しちゃったの・・かな・・・・
- 「さ、さて、美奈子ちゃん、時間がないよ！ クッキー作ろう。ちょ〜っと、手間
- は かかるけど、まこちゃん流のオリジナル・レシピを教えてあげるよっ！」
- 気乗りのしてない 美奈子ちゃんの腕を ひっぱって、キッチンに入った。
- ミントティーの、スッキリとした 後味のいい香りが 部屋中に広がる。
- ７時を回ったころ、やっと３０人分のクッキーが 焼き上がった。美奈子ちゃんと、
- キッチンのテーブルをはさんで、本日 最後のお茶。
- 美奈子 「まこちゃんのおかげで、最高のバレンタインクッキーが できたわ！(^^)/
- あしたは これで、がんばるわよーっ！」
- なんと まあ、美奈子ちゃんは いつの間にか、すっかり立ち直っていた。これ、
- この切り替えが早いところが、美奈子ちゃんの いい所なんだよ。(^^)ﾟ~
- いつまでも クヨクヨしていないんだ。なんて楽しそうに 笑うんだろう。見てる
- こっちまで、元気が出てきちゃう。
- 「そう、その意気さ！ がんばって、ほんとのステディを見つけなくっちゃね！
- あたしだって、来年のバレンタインには・・・・」
- 美奈子 「うん、おたがいに 一生チョコを贈りつづけることができるような・・」
- 「最高の 男の子を！」
- 美奈子 「ＧＥＴ しようっ！！(^｡^)/」
- それから、すっかり盛り上がって、ふたりで何時間 ダベっていたことか。
- 気のあう友達と、おいしいお茶とお菓子。これだけそろえば 女の子は、一日中でも
- 過ごせるんだよ。 そう・・・・ え？ お・・お・菓・子・・・・？ (ﾟ_ﾟ;)ﾟ〜
- 「ちょ、ちょっと待って、美奈子ちゃん。あたしたち・・なに、食べてんの・・？」
- 美奈子 「やだ〜っ！(ﾟ_ﾟ;) あたしのクッキーぃ！！・・こんなに、へっちゃったぁ〜・・・ (T___T) 」
- 「え、え〜と、あと何人分、残ってるんだろ。１、２、３・・・・・」
- 美奈子 「あぁっ！ もう１０時半！？ ママがカンカンになってるわ。もう帰るね。じゃあ、
- まこちゃん、朝までに足りなくなった分、お願いね！」
- 「えっ、(ﾟ_ﾟ;)ﾟ〜 これから、あたしが作るの！？」
- 美奈子 「朝一番、７時には 取りにくるから、絶対よ！」
- そんなぁ、寝るなってことぉ？ (T___T) あたしだって、あした 学校があるのに・・・
- 美奈子ちゃん、あたしの返事も聞かずに、とんで帰っちゃった・・・。しょうがないなぁ・・・
- ・・・もう・・・・。
- 酸味の強い、モカの香りが 部屋中に広がる。
- あたしは、思いっきり濃く いれた コーヒーを、ブラックで 一気に飲み干した。
- ・・さて・・と・・・
- フゥ〜〜・・・・ (-_-;)ﾟ〜
- ＥＮＤ
- セラムン寄席 席亭 わんべえ
- (JCC00655@nifty.ne.jp)
- 日曜の朝 ７時。あたしは、美奈子ちゃんの出し抜けの訪問に たたき起こされた。